猫の咳 — 正常?病気?原因と病院に行くべきサイン
この記事は獣医師の監修を受けています
猫が咳をすることは犬に比べるとかなり稀です。そのため、猫が咳をしている場合は 「何かの病気のサイン」である可能性が高い と考えてください。毛玉を吐く前の「カッカッ」という動作と混同しやすいですが、咳と嘔吐は異なる動作です。この記事では、猫の咳の原因と受診すべきタイミングを解説します。
猫の咳と毛玉吐きの見分け方
飼い主が「咳」と「毛玉を吐く前のえずき」を混同するケースは非常に多いです。
咳の特徴:
- 首を前に伸ばし、体を低くして「ケッケッ」「ヒューヒュー」と音を出す
- 口は少し開いている
- お腹の動きは小さく、胸郭(きょうかく:肋骨のあたり)が動く
- 何も吐き出さないことが多い
- 終わった後はすぐに通常の呼吸に戻る
毛玉吐き(嘔吐)の特徴:
- 「カッカッ」「オエッ」というえずきの後に、毛玉や胃液を吐き出す
- お腹が大きく波打つ ように収縮する
- 最終的に内容物が口から出てくる
判断に迷う場合は 動画を撮影して獣医師に見せる のが最も確実です。
猫の咳の主な原因
1. 猫喘息(ねこぜんそく)
猫の慢性的な咳で 最も多い原因 です。人間の喘息と同じように、アレルゲン(ハウスダスト・花粉・タバコの煙・猫砂の粉塵など)に対する気道の過敏反応で気管支が収縮し、咳や呼吸困難を引き起こします。
2〜8歳の猫に多く見られ、シャム猫は遺伝的に発症リスクが高いとされています。発作時は「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴(ぜんめい)を伴い、体を低くして首を伸ばす独特の姿勢をとります。
2. 呼吸器感染症
猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルスによる上気道感染症(いわゆる「猫風邪」)から二次的に気管支炎を起こし、咳が出ることがあります。くしゃみ・鼻水・目やにを伴うのが特徴です。
マイコプラズマ(細菌の一種)による感染も猫の慢性的な咳の原因になります。
3. 心臓病(心筋症)
猫に最も多い心臓病は「肥大型心筋症(HCM:ひだいがたしんきんしょう)」です。心筋が異常に厚くなり、心臓のポンプ機能が低下します。進行すると肺に水が溜まる肺水腫(はいすいしゅ)や胸に水が溜まる胸水(きょうすい)を起こし、咳や呼吸困難の原因になります。
犬と異なり、猫の心臓病は咳よりも 呼吸の速さの変化(安静時呼吸数の増加) で気づかれることが多いですが、咳が出ることもあります。
4. 肺の寄生虫
肺吸虫(はいきゅうちゅう)や猫肺虫(Aelurostrongylus abstrusus)が肺に寄生して咳を引き起こすことがあります。外に出る機会がある猫で、慢性的な咳が続く場合は寄生虫も疑います。カタツムリやカエルなどの中間宿主を食べて感染します。
5. 腫瘍(肺腫瘍・リンパ腫)
高齢猫(10歳以上)で咳が続く場合は、肺の原発性腫瘍や縦隔リンパ腫(じゅうかくリンパしゅ:胸の中央にできるリンパ腫)も鑑別診断に含まれます。体重減少や食欲低下を伴うことが多いです。
今すぐ病院に行くべきサイン
猫の咳は犬に比べて病的な意味合いが強いため、咳が確認できた時点で早めの受診を推奨 します。特に以下の場合は緊急性が高いです。
- 口を開けて呼吸している(猫の開口呼吸は緊急サイン)
- 舌や歯茎が紫〜青白い(チアノーゼ)
- 呼吸が速い(安静時に 1分間40回以上。猫の正常値は15〜30回)
- 横になれず座ったまま呼吸 している
- 咳が 1日に5回以上 出ている
- 食欲が2日以上ほとんどない
- 咳に加えて 急激な体重減少 がある
- 後ろ足が突然動かなくなった(心臓病による血栓の可能性)
猫の開口呼吸は犬のパンティングとは異なり、酸素が足りていない深刻な状態 を意味します。見かけたら即座に動物病院へ連れて行ってください。
様子見してよい場合
猫の咳は基本的に早めの受診を推奨しますが、以下のすべてを満たす場合は1〜2日間の経過観察が可能です。
- 咳が1日に1〜2回程度で、すぐに治まる
- 咳の後はすぐに普段通りの行動に戻る
- 食欲・飲水量・排泄が正常
- 呼吸の速さに変化がない(安静時1分間30回以下)
- 鼻呼吸ができている(口を開けて呼吸していない)
ただし 2日以上咳が続く場合は必ず受診 してください。
自宅でできるケア
環境を整える(猫喘息対策として特に重要)
- 猫砂を粉塵の少ないタイプに変更:鉱物系の細かい砂は粉塵が多く、気道を刺激します。紙製・おから製・大粒タイプが推奨
- タバコの煙を完全に排除:同居家族が喫煙する場合、猫のいる部屋では絶対に吸わない
- 芳香剤・アロマ・お香を使わない:特にエッセンシャルオイルのディフューザーは猫に有害な成分が含まれることがある
- 空気清浄機を設置:ほこり・花粉・カビの胞子を除去
- こまめな掃除:掃除機は猫がいない部屋で使うか、猫を別室に移してから使う(掃除機の排気で粉塵が舞い上がるため)
安静時呼吸数のモニタリング
猫が寝ているときの呼吸数を数える習慣をつけましょう。
- 胸の上下を15秒間数えて4倍する
- 正常値は 1分間に15〜30回
- 35回以上が続く場合 は心臓病や肺の異常を疑い受診する
スマートフォンのタイマーを使って週に1〜2回測定し、記録しておくと変化に気づきやすくなります。
ストレスの軽減
- 猫はストレスで免疫力が低下し、呼吸器症状が悪化することがあります
- 隠れ場所を十分に確保する
- 急な環境変化を避ける
病院に行くときの準備
- 咳の動画:毛玉吐きとの区別が重要なため、動画が診断の決め手になります
- 安静時呼吸数の記録:自宅で測定した呼吸数のデータ
- 症状の経過メモ:いつから・どのくらいの頻度で・どんな時に咳が出るか
- 猫砂の種類と最近の変更:砂の変更時期と種類
- 室内飼いか外出ありか:寄生虫感染のリスク評価に必要
- ワクチン接種歴:猫ヘルペス・カリシウイルスの予防接種状況
- キャリーにタオルをかぶせて移動:病院への移動自体がストレスになるため、視界を遮って落ち着かせる
- ペット保険証:加入している場合は持参
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。