猫風邪(猫上部気道感染症)— 症状・治療・予防ワクチン
この記事は獣医師の監修を受けています
猫風邪は、正式には「猫上部気道感染症(URI: Upper Respiratory Infection)」と呼ばれる感染症です。くしゃみ・鼻水・目やにが主な症状で、特に子猫や高齢猫では重症化するリスクがあります。猫風邪は適切な治療とワクチン接種で予防・管理できる病気です。この記事では、猫風邪の原因・症状・治療法・予防について詳しく解説します。
猫風邪の原因となる病原体
猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)
猫風邪の原因の約半数を占めるウイルスです。一度感染すると体内の神経節(しんけいせつ:神経細胞が集まった場所)にウイルスが潜伏し、生涯にわたってキャリア(保有者)となります。ストレスや免疫低下をきっかけに再活性化し、症状が再発することがあります。目の症状(結膜炎・角膜潰瘍)が出やすいのが特徴です。
猫カリシウイルス(FCV)
猫風邪のもう一つの主要原因です。口内炎(口の中の潰瘍)を起こしやすく、よだれが増える・食事を嫌がるといった症状が特徴的です。変異株が多く、ワクチンを打っていても感染することがありますが、ワクチン接種済みの猫は症状が軽く済む傾向があります。
クラミジア・フェリス(Chlamydia felis)
細菌の一種で、特に結膜炎(目の充血・腫れ・目やに)を起こします。抗生物質が効くため、適切な治療で改善が見込めます。多頭飼育環境で感染が広がりやすいです。
主な症状と経過
猫風邪の潜伏期間(感染してから症状が出るまで)は2〜10日です。
初期症状(1〜3日目)
- くしゃみが頻繁に出る(1日10回以上)
- 透明でサラサラな鼻水
- 軽い結膜炎(目が潤む・少し赤い)
- やや元気がない
進行期(3〜7日目)
- 鼻水が黄色〜緑色に変化(二次的な細菌感染の合併)
- 膿のような目やに(目が開けられなくなることも)
- 発熱(39.5°C以上)
- 食欲低下(匂いがわからず食べない)
- よだれが増える(カリシウイルスの場合、口内炎による痛み)
回復期(7〜14日目)
多くの場合、適切な治療とケアで7〜14日程度で症状が改善します。ただし、子猫・高齢猫・免疫不全の猫では3週間以上かかることもあります。
今すぐ病院に行くべきサイン
以下のいずれかに当てはまる場合は、当日中の受診が必要です。
- 24時間以上まったく食事をとっていない(特に子猫は12時間で危険)
- 口を開けて呼吸している(鼻づまりが重度)
- ぐったりして動かない
- 目が腫れて完全に閉じている、または目の表面が白く濁っている
- 子猫(生後6か月未満)が発症した
- 脱水の兆候がある(皮膚をつまんで戻りが遅い、歯茎が乾いている)
- 症状が出始めてから3日経っても改善傾向がない
様子見してよい場合
以下の条件をすべて満たす場合、1〜2日の自宅観察が可能です。
- 成猫(1歳以上)で基礎疾患がない
- くしゃみ・透明な鼻水が軽度に出ている程度
- 食欲が通常の7割以上あり、水も飲めている
- 元気があり、呼びかけに反応する
- 目やにがほとんどない、または少量の透明な涙程度
- ワクチン接種歴がある
2日以上改善しない場合、または症状が悪化する場合は受診してください。
治療法
猫風邪の治療は主に対症療法(症状を和らげる治療)と二次感染の予防・治療です。
動物病院での治療
- 抗生物質 — 二次的な細菌感染の治療・予防に使います。ウイルス自体には効きませんが、細菌の重複感染を防ぐ目的で処方されます。
- 抗ウイルス薬 — ヘルペスウイルスに対しては、ファムシクロビルなどの抗ウイルス薬が使われることがあります。
- 点眼薬 — 結膜炎や角膜潰瘍がある場合、抗生物質の点眼薬を処方します。
- 輸液(点滴) — 脱水がある場合、皮下輸液や静脈輸液で水分を補います。
- ネブライザー(吸入療法) — 重度の鼻づまりに対して、薬剤を霧状にして吸入させることがあります。
自宅でできるケア
- 鼻・目の清拭 — ぬるま湯で湿らせたガーゼで、鼻や目の分泌物をこまめに拭き取ります。1日3〜4回が目安です。
- 加湿と蒸気吸入 — 湿度50〜60%を維持。浴室の蒸気を5〜10分吸わせると鼻づまりが楽になります。
- 食事の工夫 — ウェットフードを人肌に温めて香りを立たせます。それでも食べない場合はペースト状のおやつ(ちゅ〜るなど)を試してください。子猫が12時間、成猫が24時間以上食べない場合は受診必須です。
- 隔離 — 多頭飼いの場合、感染拡大を防ぐため発症した猫を別室に隔離します。世話をした後は手洗いをし、衣服を着替えるのが理想です。
- L-リジンサプリメント — ヘルペスウイルスの増殖を抑える可能性があるとされています。獣医師と相談の上で使用を検討してください。
予防 — ワクチン接種が最も重要
猫3種混合ワクチン(コアワクチン)
猫ヘルペスウイルス・猫カリシウイルス・猫汎白血球減少症ウイルスの3種を予防するワクチンです。すべての猫に推奨される基本的なワクチンです。
- 子猫: 生後6〜8週齢で初回接種 → 3〜4週間隔で2〜3回追加接種 → 生後16週以降に最終接種
- 成猫: 初年度は2回接種 → その後は1〜3年ごとに追加接種(獣医師の判断による)
日常の予防策
- 新しく迎えた猫は2週間程度隔離し、健康状態を確認してから同居させる
- 多頭飼育ではトイレ・食器を個別にする
- 室内飼いを徹底する(外猫との接触は最大の感染リスク)
- ストレスの軽減(引っ越し・来客・多頭間のトラブルなどに配慮)
病院に行くときの準備
- 症状の経過メモ(いつから・どの症状が出ているか)
- 食事量と水分摂取量(普段の何割程度か)
- ワクチン接種歴(最後に打った時期と種類)
- 同居動物の情報(同居猫の有無、同居猫の健康状態)
- 目やに・鼻水の写真(色と量がわかるもの)
- 体温の記録(測定できた場合)
これらの情報が揃っていると、獣医師が適切な治療方針を迅速に立てられます。
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。