犬が異物を飲んだ — 誤飲時の対処法と絶対やってはいけないこと
この記事は獣医師の監修を受けています
「目を離した隙に何かを飲み込んだかもしれない」——犬の誤飲は飼い主が最も慌てる事故のひとつです。靴下、ボタン電池、おもちゃの破片、串、焼き鳥の竹串など、犬が飲み込むものは実にさまざまです。日本小動物外科研究会の報告では、犬の救急受診理由の約15〜20%が異物誤飲とされています。正しい知識があれば、パニックにならず適切な初動が取れます。
犬が異物を飲み込みやすい状況
よくある誤飲物
犬が飲み込みやすいものには、大きく分けて3つのカテゴリがあります。
- 鋭利なもの: 鶏の骨、竹串、針、画鋲、ガラス片
- 詰まりやすいもの: 靴下、タオルの切れ端、ボール、トウモロコシの芯、桃やアボカドの種
- 化学的に危険なもの: ボタン電池(消化管粘膜を化学熱傷させる)、磁石(2個以上で腸壁を挟み壊死させる)
飲み込みやすい犬の特徴
子犬(生後6か月〜1歳半)は何でも口に入れる時期で、最も誤飲リスクが高いです。ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、フレンチ・ブルドッグなど、食欲旺盛な犬種も要注意です。
異物を飲んだときの症状
誤飲直後は無症状のこともありますが、数時間〜数日で以下の症状が出ることがあります。
- 嘔吐を繰り返す(水を飲んでも吐く)
- 食欲の急な低下(いつも食べるのに見向きもしない)
- お腹を触ると痛がる、背中を丸めてうずくまる
- よだれが大量に出る
- 元気がなくなり、ぐったりする
- 便が出ない、または血便が出る
特にボタン電池は2時間以内に消化管を損傷し始めるため、飲んだ可能性がある時点で即受診が必要です。
今すぐ病院に行くべきサイン
以下のいずれかに当てはまる場合は、夜間救急を含めて直ちに受診してください。
- ボタン電池・磁石・針など鋭利なものを飲んだ(または疑いがある)
- 嘔吐を繰り返し、水も飲めない
- お腹が膨れている、触ると激しく痛がる
- ぐったりして動かない、呼びかけへの反応が鈍い
- 血を吐いた、または血便が出た
- 呼吸が荒い、苦しそうにしている
様子見してよい場合
以下の条件をすべて満たす場合に限り、便で排出されるか数時間観察できます。
- 飲んだものが小さく丸いもの(例: 小さなプラスチック片、丸い小石)で、鋭利でない
- 飲み込んだサイズが犬の体格に対して十分小さい(目安: 犬の食道径=体重5kgで約1.5cm、10kgで約2cm)
- 元気があり、食欲もある
- 嘔吐していない
- お腹を触っても痛がらない
ただし24〜48時間以内に便に排出されなければ必ず受診してください。レントゲンで位置確認が必要です。
絶対にやってはいけないこと
- 無理に吐かせない — 鋭利な異物は吐かせると食道を二重に傷つけます。ボタン電池も吐かせる途中で食道に停滞すると重大な損傷を起こします。
- 塩水を飲ませない — 「塩水で吐かせる」という民間療法は塩中毒(高ナトリウム血症)を引き起こし、最悪の場合死に至ります。
- オキシドールで吐かせない — 犬では3%オキシドールによる催吐が獣医師の管理下で行われることがありますが、濃度や量を間違えると胃粘膜をただれさせるため、自己判断での使用は厳禁です。
- 様子を見すぎない — 「元気だから大丈夫」と数日放置すると、腸閉塞が進行して開腹手術が必要になるケースがあります。
自宅でできる応急処置
- 口の中を確認 — 異物がまだ口の中や喉の手前に見えている場合は、無理のない範囲で取り除きます。奥に押し込まないよう注意してください。
- 何を飲んだか特定する — 同じ製品の残りがあれば病院に持参します。サイズ・素材・個数を確認してください。
- 飲んだ時刻を記録する — 催吐処置は一般的に誤飲後2時間以内が有効とされます。時間が経つほど胃から腸に移動し、催吐では取り出せなくなります。
- 追加の飲食をさせない — 食事や水を与えると異物が腸に押し出され、詰まるリスクが上がります。
病院に行くときの準備
- 飲み込んだもの(またはその同一品・パッケージ) — 素材・サイズの把握に役立つ
- 誤飲した推定時刻
- 誤飲後の症状の経過(嘔吐の回数、便の状態)
- 嘔吐物や便の写真
- 犬の体重(催吐薬の用量計算に必要)
素早く正確に情報を伝えることで、レントゲン撮影・内視鏡・催吐処置の判断がスムーズになります。
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。