犬のしこり・できものの見分け方 — 良性?悪性?受診の目安

犬にしこり・できものを発見 — 良性?悪性?見分け方と受診の目安

この記事は獣医師の監修を受けています

愛犬を撫でていたら皮膚の下にコリッとしたしこりを見つけた——。「がんかもしれない」と不安になる飼い主さんは少なくありません。実際には犬のしこりの多くは良性ですが、外見だけで良性・悪性を判断することは獣医師でも困難です。この記事では、しこりの種類と特徴、自宅でのチェック方法、受診すべきタイミングを解説します。


犬に多いしこりの種類

良性のしこり

脂肪腫(しぼうしゅ)

犬で最も多い良性腫瘍です。皮膚の下にできる柔らかい丸い塊で、触ると皮膚の下で動きます。肥満気味の中高齢犬(7歳以上)に多く、ラブラドール・レトリーバー、ビーグル、ダックスフンドなどで好発します。通常は治療不要ですが、大きくなって動きを妨げる場合は切除を検討します。

皮脂腺腫(ひしせんしゅ)

イボのような見た目で、皮膚表面に突出することが多いです。カリフラワー状や乳頭状(乳首のような形)の形態をとります。高齢犬に多く、シー・ズー、プードル、コッカー・スパニエルで好発します。

組織球腫(そしききゅうしゅ)

3歳以下の若い犬に多い赤いドーム状のできもので、顔面・耳・四肢によく発生します。多くは1〜3か月で自然に退縮するため、経過観察で済むことが大半です。

嚢胞(のうほう)

皮膚の下にできる液体で満たされた袋状の構造物です。青みがかった色で、触ると波動感(液体が入っている感触)があります。破裂するとドロッとした内容物が出ることがあります。

悪性の可能性があるしこり

肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)

犬の皮膚にできる悪性腫瘍の中で最も頻度が高いものです。見た目はさまざまで、小さな虫刺されのように見えるものから赤く腫れた大きな塊まであります。触ると周囲が赤く腫れる(ダリエ徴候) が特徴的ですが、出ない場合もあります。パグ、ボクサー、ゴールデン・レトリーバーで好発します。

悪性黒色腫(メラノーマ)

口腔内・爪の付け根・皮膚に発生する黒〜暗褐色の腫瘍です。口腔内に発生した場合は転移率が高く、早期発見が重要です。

軟部組織肉腫

皮膚の下にできる硬い塊で、周囲の組織に浸潤する(境界が不明瞭に広がる)性質があります。初期は触っても痛みがないため見逃されやすいです。


自宅でのセルフチェック方法

月に1回、ブラッシングや入浴の際に全身のしこりチェックを行いましょう。

チェックのポイント

  1. 全身を手で触る:頭→首→肩→胸→脇の下→お腹→背中→腰→後肢→尻尾の順に手のひらで撫でながら異常を探す
  2. 口の中も確認:歯茎・舌・口蓋に腫れや変色がないかをチェック(口腔内の悪性腫瘍は見逃されやすい)
  3. 見つけたら記録する:場所・大きさ(mm単位)・形状・硬さ・色を記録。写真を撮り、隣にスケール(定規やコイン)を置くと経過比較がしやすい

しこりの観察項目

  • 大きさ:初回のサイズと、その後の変化速度
  • 硬さ:柔らかい(脂肪腫に多い)か、硬い(肉腫に多い)か
  • 動き:皮膚の下で動くか(良性に多い)、周囲に固着しているか(悪性に多い)
  • 表面の状態:潰瘍(かいよう=表面がただれている)・出血の有無
  • 成長速度:1か月で2倍以上に急成長するものは要注意

今すぐ病院に行くべきサイン

以下のいずれかに当てはまる場合は早めの受診を推奨します(緊急ではないが先延ばしにしないでください)。

  • 1か月以内に目に見えて大きくなった
  • しこりの表面が潰瘍化して出血・浸出液がある
  • 触ると犬が痛がる
  • しこりの色が黒や暗赤色
  • 周囲の皮膚が赤く腫れている
  • しこりが皮下に固着して動かない
  • 口の中・爪の付け根・肛門周囲にできた
  • 直径が1cm以上ある

注意: 小さいから安全、とは限りません。肥満細胞腫は直径数mmでも悪性度が高い場合があります。


様子見してよい場合

以下をすべて満たす場合は、2〜4週間後に再評価する形で様子を見ることができます。

  • 直径5mm以下で変化がない
  • 柔らかく、皮膚の下で動く
  • 表面がなめらかで潰瘍・出血がない
  • 犬が気にしていない(痛み・かゆみの兆候なし)
  • 2〜4週間のサイズ変化がない(記録して比較する)

ただし初めて見つけたしこりは、たとえ小さくても一度は獣医師に診てもらうことを推奨します。触診だけで良性・悪性の判断はできず、細胞診(後述)で確認するのが最も安全です。


自宅でのケア

やるべきこと

  • しこりのサイズ・外観を定期的に記録する(写真+計測)
  • しこり周辺を清潔に保つ(ただし過度な消毒は不要)
  • 犬がしこりを舐め続ける場合はエリザベスカラーを装着する

やってはいけないこと

  • 自分で潰す・絞り出す:感染や出血、腫瘍の拡散リスク
  • 針を刺す:感染のリスクが極めて高い
  • 民間療法で「様子を見続ける」:悪性腫瘍は早期発見が予後を大きく左右します

病院に行くときの準備

  1. しこりの記録:発見日・場所(写真に赤丸で印)・サイズの経過
  2. 過去のしこりの病歴:以前に切除や細胞診を受けた記録があれば持参
  3. 犬の年齢・犬種・避妊去勢の有無:腫瘍の種類を推定する参考になる
  4. しこり以外の体調変化:食欲・体重・元気度・飲水量の変化
  5. 保険証:細胞診や組織検査は保険適用の対象になることが多い

この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。

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この記事は一般的な獣医学知識に基づく情報提供を目的としており、獣医師の診察に代わるものではありません。 個々の状態は異なるため、少しでも不安がある場合は動物病院を受診してください。