猫の痙攣・けいれん — 原因と発作中にやるべきこと・やってはいけないこと
この記事は獣医師の監修を受けています
愛猫が突然体を硬直させてガタガタ震え出す——。初めて目の当たりにした飼い主さんはパニックになって当然です。猫のけいれん(痙攣)は脳が異常な電気信号を出すことで全身または体の一部が不随意に動く状態で、原因は多岐にわたります。この記事では、発作が起きたときに飼い主ができること・絶対にやってはいけないこと、そして病院へ行くべきタイミングを整理します。
けいれんの主な原因
1. てんかん(特発性てんかん)
脳に構造的な異常がないにもかかわらず繰り返し発作が起こる病気です。猫では犬ほど多くありませんが、1〜5歳の若い猫で発症することがあります。発作の間隔は数週間〜数か月とまちまちです。
2. 脳の構造的疾患
脳腫瘍・脳炎・水頭症・脳梗塞など、脳そのものに病変がある場合にけいれんが起こります。中高齢(7歳以上)の猫で初めて発作が出た場合は、これらの疾患を優先的に疑います。
3. 中毒
ユリ科植物・エッセンシャルオイル・殺虫剤(ピレスロイド系)・人間の薬(イブプロフェンなど)を口にすると、急性中毒でけいれんが誘発されます。「何かを舐めた・噛んだ形跡がある」場合は中毒を最優先で考えます。
4. 代謝異常
低血糖・低カルシウム血症・肝性脳症(肝臓の機能低下で体内にアンモニアが蓄積)・腎不全による尿毒症などが原因になります。特に持病のある猫やシニア猫で注意が必要です。
5. 感染症
猫伝染性腹膜炎(FIP)・トキソプラズマ症・クリプトコッカス症などの感染症が脳に波及すると、けいれんの原因となることがあります。
発作中にやるべきこと
1. まず飼い主が落ち着く
発作の多くは1〜2分で自然に収まります。大声を出したり猫を揺さぶったりしても発作は止まりません。
2. 安全を確保する
- 猫の周囲から家具の角・落下の危険がある棚・硬い物を遠ざける
- 高い場所にいる場合は、毛布やクッションで落下時の衝撃を軽減する
- 他のペットや小さな子どもを部屋から離す
3. 時間を計る
発作の開始時刻と終了時刻をスマートフォンで記録します。発作が5分以上続く場合は「重積発作」と呼ばれ、脳に不可逆的なダメージを与える危険があるため、すぐに動物病院へ連絡してください。
4. 可能なら動画を撮影する
獣医師が発作の種類を判断するうえで、動画は非常に有力な情報になります。安全が確保できたあとで構いません。
発作中にやってはいけないこと
- 口に手や物を入れない:猫は発作中に舌を飲み込むことはありません。指を噛まれて大けがをする危険があります
- 体を押さえつけない:骨折や脱臼のリスクがあります。体は自由にさせてください
- 水や薬を飲ませない:誤嚥(ごえん=気管に入ること)の危険があります
- 大声で呼びかけ続けない:刺激が発作を長引かせる場合があります
今すぐ病院に行くべきサイン
以下のいずれかに当てはまる場合は緊急受診が必要です。
- 発作が5分以上止まらない
- 24時間以内に2回以上発作が起きた(群発発作)
- 発作後30分以上たっても意識がもうろうとしている
- 嘔吐・呼吸困難・チアノーゼ(歯茎や舌が紫色)がある
- 中毒の可能性がある物質を口にした形跡がある
- 初めての発作で原因が不明
様子見してよい場合
以下をすべて満たす場合に限り、次の診療時間まで自宅で観察できます。
- すでにてんかんと診断され、抗てんかん薬を服用中である
- 発作は2分以内で自然に収まった
- 発作後15〜30分で普段の様子に戻った
- 24時間以内に発作は1回のみ
- 食欲・排泄・歩行に異常がない
ただし発作が初めての場合は、たとえ短時間で収まっても原因の特定が必要です。翌日以内に受診してください。
自宅での管理とケア
発作の記録をつける
- 発生日時・発作の長さ(秒単位)
- 発作前の行動(寝ていた・興奮していたなど)
- 発作の様子(全身性か部分的か、意識の有無)
- 発作後の回復までの時間
この記録は投薬量の調整や治療方針の決定に直接役立ちます。
環境の安全対策
- 高所への登り口を制限する(キャットタワーの最上段を外すなど)
- 浴槽に水を溜めたままにしない
- 部屋の角にクッション材を設置する
抗てんかん薬を処方されている場合
- 自己判断で投薬を中止しない:急な断薬は重積発作を誘発します
- 投薬時間のばらつきは±1時間以内に抑える
- 薬の残量が1週間分を切ったら早めに病院へ連絡する
病院に行くときの準備
- 発作の動画:スマートフォンに保存しておき、受診時に獣医師に見せる
- 発作記録のメモ:日時・長さ・頻度・前後の様子を時系列でまとめる
- 服用中の薬リスト:薬の名前・用量・直近の投薬時間
- 最近の変化:フードの切り替え・引っ越し・新しい植物の導入など環境面の変化
- 中毒の疑いがある場合:原因と思われる物質の現物またはパッケージを持参する
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。