猫の抜け毛がひどい — 正常な換毛と過剰グルーミングの見分け方

猫の抜け毛がひどい — ストレス?病気?原因と受診の目安

この記事は獣医師の監修を受けています

猫の毛が大量に抜ける、撫でるたびに手に毛がごっそりつく——。猫も季節の変わり目に毛が生え替わりますが、地肌が見えるほどの脱毛や特定の部位だけ毛が薄くなる場合は、病気やストレスのサインかもしれません。この記事では猫の抜け毛の原因を正常・異常に分けて解説し、受診の目安と自宅ケアを紹介します。


正常な抜け毛

猫の換毛期

猫にも換毛期があり、春(冬毛→夏毛)と秋(夏毛→冬毛)に抜け毛が増えます。完全室内飼いの猫は空調の影響で季節感が薄れ、一年を通じて少しずつ毛が抜ける「だらだら換毛」になることもあります。

正常な抜け毛の特徴

  • 体全体から均一に抜ける
  • 地肌が見えるハゲにはならない
  • 皮膚に赤みや炎症がない
  • 食欲・元気が正常
  • 新しい毛がちゃんと生えてくる

異常な抜け毛の原因

1. 過剰グルーミング(心因性)

猫の脱毛で非常に多い原因がストレスによる過剰グルーミングです。不安やストレスを感じると、自分を落ち着かせるために同じ場所を繰り返し舐め、毛が抜けてしまいます。

  • お腹・内股・前足の内側・尾の付け根が好発部位
  • 皮膚自体に炎症がなく、舐め取られたように毛が短くなっている
  • 飼い主が見ていないときに舐めていることが多い

原因となるストレス要因:引っ越し・新しい同居猫・家族の増減・飼い主の不在時間の増加・トイレ環境の不満など。

2. アレルギー性皮膚炎

ノミアレルギー・環境アレルギー・食物アレルギーによるかゆみで、掻いたり舐めたりして毛が抜けます。

  • ノミアレルギー:腰〜尾の付け根に集中した脱毛
  • 環境アレルギー:顔・耳・首の脱毛、季節性の悪化
  • 食物アレルギー:顔・首の脱毛、消化器症状をともなうことも

3. 皮膚糸状菌症(真菌感染)

カビ(皮膚糸状菌)が毛に感染し、円形の脱毛を引き起こします。脱毛部にフケやかさぶたが見られ、かゆみは軽度です。子猫や免疫力が低下した猫に多く、人にもうつる人獣共通感染症です。長毛種では症状がわかりにくいことがあります。

4. ホルモン疾患

猫では犬ほど多くありませんが、甲状腺機能亢進症(高齢猫に多い)やクッシング症候群がまれに脱毛の原因になります。甲状腺機能亢進症では被毛がボサボサになり、過剰なグルーミングとともに体重減少・多飲多尿・活動性の増加が見られます。

5. 好酸球性肉芽腫群(こうさんきゅうせいにくがしゅぐん)

猫に特有の皮膚疾患で、アレルギーが背景にあることが多いです。3つのタイプがあります。

  • 無痛性潰瘍:上唇にできるえぐれた傷
  • 好酸球性プラーク:お腹や内股にできる赤く盛り上がった平らな病変。強いかゆみをともなう
  • 線状肉芽腫:後ろ足の裏側にできる黄色〜ピンク色の線状の腫れ

今すぐ病院に行くべきサイン

以下が一つでも当てはまる場合は早めに動物病院へ。

  • 地肌が見えるハゲができている
  • 円形の脱毛部にフケやかさぶたがある(皮膚糸状菌症の疑い)
  • 皮膚に赤み・潰瘍・盛り上がった病変がある
  • 掻きむしって出血している
  • 脱毛が急速に広がっている
  • 体重減少・多飲多尿・食欲亢進(甲状腺機能亢進症の疑い)
  • 同居動物や家族にも皮膚症状がある(感染症の疑い)

様子見してよい場合

以下をすべて満たす場合は1〜2週間経過観察できます。

  • 換毛期に一致した時期で、全身から均一に抜けている
  • 地肌が見えるハゲがない
  • 皮膚に炎症やかさぶたがない
  • 食欲・元気・体重が正常
  • グルーミングの頻度が極端に増えていない

自宅でできるケア

ブラッシング

定期的なブラッシングは死毛を取り除き、毛球症(飲み込んだ毛が胃腸で固まる症状)の予防にもなります。短毛種は週1〜2回、長毛種は毎日が目安です。猫が嫌がらない程度の力で短時間から始め、徐々に慣れさせましょう。

ストレスケア

過剰グルーミングが疑われる場合は、ストレスの原因を特定して対策します。

  • 猫が安心できる高い場所や隠れ場所を確保する
  • 一人遊びできるおもちゃを複数用意する
  • 多頭飼いの場合はそれぞれの猫にテリトリーを与える
  • トイレは猫の数+1個を清潔に維持する
  • フェリウェイ(猫のフェイシャルフェロモンの合成製品)の使用を検討する

ノミ予防

室内飼いでもノミ予防は必須です。獣医師が処方する月1回のスポットオン薬や経口薬を使用しましょう。

食事管理

皮膚と被毛の健康に良いオメガ3脂肪酸を含むフードを選びます。食物アレルギーが疑われる場合は、獣医師の指導のもとで8〜12週間の除去食試験を行います。


病院に行くときの準備

  1. 脱毛部位の写真を撮る:範囲と分布がわかるように複数角度から撮影
  2. グルーミング行動の動画を撮る:猫は病院で症状を隠すため、自宅の様子が重要な診断材料
  3. 症状の経過をメモ:いつから・どう変化したか・ストレス要因の有無
  4. 食事とノミ予防の情報:フードの銘柄・予防薬の種類と投与日
  5. 同居動物・家族の症状:他のペットや人に皮膚症状があるか

この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。

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この記事は一般的な獣医学知識に基づく情報提供を目的としており、獣医師の診察に代わるものではありません。 個々の状態は異なるため、少しでも不安がある場合は動物病院を受診してください。