犬の耳が臭い — 外耳炎?耳ダニ?原因と正しい耳掃除
この記事は獣医師の監修を受けています
愛犬を抱き上げたときに耳から嫌なにおいがする、顔を近づけると独特の悪臭がある——耳のにおいは飼い主が最初に気づきやすい耳トラブルのサインです。健康な犬の耳はほぼ無臭か、わずかに体臭がある程度です。明らかなにおいがある場合は、耳の中で何らかの異常が起きている可能性があります。この記事ではにおいの種類から原因を推測する方法と、正しい耳掃除のやり方を解説します。
犬の耳が臭くなる主な原因
1. マラセチア(酵母菌)の過剰繁殖
もっとも多い原因です。マラセチアは犬の皮膚に常在する酵母菌ですが、耳の中の湿度が上がると異常に増殖し、甘酸っぱい発酵臭のようなにおいを発します。こげ茶〜黒っぽいベタベタした耳垢が大量に出るのが特徴です。垂れ耳の犬種やアレルギー体質の犬で特に多く見られます。
2. 細菌感染
ブドウ球菌や緑膿菌(りょくのうきん)などの細菌が耳の中で繁殖すると、腐敗臭や生臭いにおいがします。黄色〜緑色の膿のような耳だれを伴うことが多く、マラセチアのにおいとは明らかに異なる不快なにおいです。特に緑膿菌感染は治療が難しく、長引きやすい傾向があります。
3. 耳ダニ(ミミヒゼンダニ)
耳ダニが寄生すると、黒〜暗褐色のカサカサした耳垢が大量にたまり、独特のにおいを発します。耳ダニ自体のにおいというよりも、ダニの排泄物と耳垢が混ざった汚れが蓄積してにおいの原因になります。激しくかゆがるのが特徴で、耳を掻きすぎて後ろ足で耳の周りに傷をつくることもあります。
においの種類で原因を推測する目安
甘酸っぱい・発酵臭 → マラセチア(酵母菌)の可能性
パン生地やビールのような発酵臭で、茶色いベタベタした耳垢を伴います。
生臭い・腐敗臭 → 細菌感染の可能性
膿のような黄色〜緑色の耳だれがあり、触ると痛がることが多いです。
乾いた汚れっぽいにおい → 耳ダニの可能性
コーヒーかすのような黒い乾いた耳垢がたまっていて、激しいかゆみがあります。
ただし、複数の原因が同時に起きていることも珍しくないため、正確な判断は獣医師の検査が必要です。
今すぐ病院に行くべきサイン
以下のいずれかに当てはまる場合は受診してください。
- 強い悪臭が1週間以上続いている
- 黄色〜緑色の膿のような耳だれが出ている
- 耳を触ると痛がって鳴く・怒る
- 耳の入り口が赤く腫れて耳道が見えないほど狭くなっている
- 頭を一方に傾けたままにしている
- 耳の周辺が腫れている(耳血腫の可能性)
- 耳掃除をしても翌日には同じ量の耳垢がたまる
- フードを変えていないのに体を掻く仕草も増えた(アレルギーの可能性)
様子見してよい場合
以下のすべてを満たすときは、正しい耳掃除を行ったうえで2〜3日観察できます。
- においが軽度で、耳の入り口に少し耳垢がついている程度
- 耳を掻く・頭を振るなどの行動がほとんどない
- 耳の中が薄いピンク色で腫れていない
- 耳垢の色が薄黄色〜薄茶色で量が少ない
- 食欲・元気が普段通り
耳掃除をして3日経ってもにおいが戻る場合は、自然に治る状態ではないので受診してください。
正しい耳掃除のやり方
用意するもの
- 犬用イヤークリーナー(動物病院で購入できるもの、またはペットショップの犬用製品)
- コットンまたはガーゼ
- おやつ(ご褒美用)
手順
- 犬を落ち着かせ、耳たぶ(耳介)をやさしく持ち上げて耳の中を確認する
- イヤークリーナーを耳の入り口に数滴たらす(量は製品の説明に従う)
- 耳の根元を指で15〜20秒ほどやさしくマッサージする(くちゅくちゅと音がします)
- 犬が頭を振って液を出すのを待つ(振らない場合はそのままでOK)
- 出てきた汚れをコットンやガーゼでやさしく拭き取る
- おやつをあげて「耳掃除は良いこと」と覚えてもらう
絶対にやってはいけないこと
- 綿棒を耳の奥に入れる(耳道を傷つける・汚れを奥に押し込むリスク)
- 人間用のイヤークリーナーや消毒液を使う(刺激が強すぎる)
- 炎症がひどい状態で自己流の耳掃除をする(悪化の原因になる)
- 水や水道水を耳に流し込む(乾きにくく感染のリスクが上がる)
適切な頻度
健康な耳であれば月に1〜2回で十分です。外耳炎の治療中は獣医師の指示に従ってください。やりすぎは耳の中の正常な環境を壊し、かえってトラブルを招きます。
病院に行くときの準備
- においが始まった時期: いつから臭くなったか
- 耳垢の色と質感: 写真があるとベスト(茶色ベタベタ / 黒いカサカサ / 黄色い膿など)
- かゆみの程度: 掻く頻度、頭を振る回数
- 使用中のイヤークリーナー: 製品名を伝える
- シャンプー・水遊びの頻度: 耳の中の湿度に関わる情報
- アレルギー歴: 皮膚トラブルの既往
動物病院では耳鏡で耳道を観察し、耳垢を採取して顕微鏡検査(マラセチア・細菌・耳ダニの確認)を行います。必要に応じて培養検査(感受性試験:どの抗菌薬が効くか調べる検査)が行われることもあります。治療は耳洗浄と原因に応じた点耳薬が基本で、軽度であれば1〜2週間で改善します。再発を繰り返す場合は、アレルギーの検査と管理が必要になることがあります。
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。