犬が夜中に咳をする — 心臓病?気管虚脱?原因と対処法

犬が夜中に咳をする — 心臓病?気管虚脱?原因と対処法

この記事は獣医師の監修を受けています

「夜中に愛犬の咳で起こされる」「寝ている間だけ咳が出る」——日中は元気なのに夜間だけ咳が出る場合、心臓病や気管虚脱などの病気が潜んでいる可能性があります。この記事では、犬が夜間に咳をする主な原因と、飼い主ができる対処法を解説します。


夜中に咳が出る主な原因

1. 僧帽弁閉鎖不全症(心臓病)

犬の心臓病で最も多い病気で、心臓の左側にある僧帽弁(そうぼうべん)が変性し、うまく閉じなくなります。血液が逆流して心臓が徐々に肥大し、その肥大した心臓が気管を下から押し上げることで咳が誘発されます。

夜間に悪化する理由 は、横になると心臓への血液の戻り(静脈還流)が増え、心臓にかかる負荷が大きくなるためです。寝ている姿勢で肺に血液がうっ滞しやすくなり、咳の頻度が上がります。進行すると肺水腫(はいすいしゅ:肺に水が溜まる状態)を起こし、呼吸困難に陥ることがあります。

8歳以上の小型犬(キャバリア・マルチーズ・チワワ・シーズーなど)に特に多く見られます。

2. 気管虚脱(きかんきょだつ)

気管を支える軟骨リング(C型軟骨)が弱くなり、呼吸時に気管がつぶれてしまう病気です。「ガーガー」「ブーブー」というガチョウの鳴き声のような音が特徴です。

夜間は副交感神経が優位になり気管支が収縮しやすいこと、また横になることで気管にかかる重力の方向が変わることから、症状が出やすくなります。肥満の犬や夏場の高温多湿な環境では特に悪化しやすい傾向があります。

3. 慢性気管支炎

気管支に慢性的な炎症が起きている状態で、人間の「慢性咳嗽(まんせいがいそう)」に似ています。2か月以上続く咳が特徴的で、気道が過敏になっているため、温度変化・乾燥・ほこりなど些細な刺激で咳が出ます。

夜間は空気が冷えやすく乾燥しやすいため、咳が悪化することがあります。

4. 肺水腫

心臓病の進行や急性心不全により肺に水分が漏れ出した状態です。「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という湿った呼吸音とともに、ピンク色の泡状の液体を咳で吐き出すことがあります。

横になると肺のうっ血が悪化するため、犬は苦しくて横になれず座ったまま呼吸する(起座呼吸:きざこきゅう)姿勢をとることがあります。これは緊急性の高い状態です。


今すぐ病院に行くべきサイン

以下のいずれかに当てはまる場合は 緊急受診 が必要です。夜間でも救急病院を受診してください。

  • 舌や歯茎が紫〜青白い(チアノーゼ)
  • 横になれず座ったまま呼吸している(起座呼吸)
  • ピンク色の泡状の液体 を吐き出した
  • 安静時でも呼吸が速い(1分間に40回以上)
  • 呼吸のたびに お腹が大きく上下する

以下の場合は翌日中の受診を推奨します。

  • 夜間の咳で 3日連続 起きている
  • 咳が 1回の発作で5分以上 止まらない
  • 咳の回数が日ごとに増えている
  • 食欲の低下が見られる
  • 散歩中に以前より すぐ疲れる・立ち止まる
  • 失神(一瞬意識を失ってバタンと倒れる)がある

様子見してよい場合

以下のすべてを満たしていれば、まず2〜3日は自宅で様子を見ることができます。

  • 夜間の咳が1〜2回程度で、すぐに治まる
  • 咳き込んだ後は普通に眠りに戻れる
  • 日中は元気で食欲も正常
  • 呼吸の速さや舌の色に異常がない
  • 最近ドッグランやペットホテルを利用した(ケンネルコフの可能性)

ただし、3日以上夜間の咳が続く場合や、8歳以上で初めて夜間の咳が出た場合は、心臓病の早期発見のため受診をおすすめします。


自宅でできるケア

寝る環境を整える

  • 頭の位置をやや高くする:クッションや毛布を使って上半身を少し高くすると、気道が開きやすくなり呼吸が楽になります。角度は15〜30度が目安です
  • 加湿器を使う:寝室の湿度を50〜60%に保つ。乾燥は気道粘膜を刺激し咳を悪化させます
  • 室温を適切に保つ:20〜23℃を目安に。急激な温度変化を避ける

就寝前の工夫

  • 就寝直前の興奮を避ける:激しい遊びは就寝の1時間前までに終える
  • 飲水をこまめに:喉の乾燥を防ぐ。ただし心臓病の治療中で水分制限がある場合は獣医師の指示に従う
  • 就寝前に少し外気に当てる:5分ほど涼しい空気を吸わせることで気道が落ち着くことがあります(寒冷刺激で悪化する場合は中止)

体重管理を徹底する

肥満は心臓と気管の両方に負担をかけます。BCS(ボディコンディションスコア)を確認し、理想体重を5%以上超えている場合は減量計画をかかりつけ医と相談してください。

記録と動画撮影

  • 夜間の咳を動画で撮影:暗くてもスマートフォンの録音機能で音だけでも記録する
  • 咳が出た時刻・持続時間・体勢(横向き・うつ伏せ・座位など)を記録
  • 発作の頻度の変化(週に何回→毎晩に変化、など)

病院に行くときの準備

  1. 夜間の咳の動画・録音:咳の音が診断の重要な手がかりになります
  2. 症状の経過メモ:いつから・どのくらいの頻度で・どんな体勢で咳が出るか
  3. 過去の検査結果:心臓のエコー検査やレントゲンの結果があれば持参
  4. 現在服用中の薬のリスト:心臓の薬や利尿剤を服用している場合は薬の名前と量
  5. 運動耐容能(たいようのう)の変化:散歩の距離や速度がどう変わったか
  6. ペット保険証:加入している場合は持参

この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。

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この記事は一般的な獣医学知識に基づく情報提供を目的としており、獣医師の診察に代わるものではありません。 個々の状態は異なるため、少しでも不安がある場合は動物病院を受診してください。