犬がいきむのに便が出ない — 会陰ヘルニア?前立腺肥大?

犬がうんちを出せない — いきむのに出ない原因と対処法

この記事は獣医師の監修を受けています

散歩中に何度も排便の姿勢をとるのに便が出ない。お尻を気にして地面にこすりつける。いきんでいるときに鳴き声を上げる——。「出したいのに出せない」状態は犬にとって大きな苦痛です。単純な便秘から腸閉塞まで原因はさまざまで、中には緊急性の高いケースもあります。この記事では「いきむのに出ない」原因と、自宅での対処・受診の判断基準を解説します。


いきむのに便が出ない主な原因

1. 硬い便による排便困難

水分不足・食物繊維不足・加熱した骨の摂取などで便が極端に硬くなり、直腸から排出できない状態です。犬が最もよく経験する排便困難の原因で、排便姿勢を長時間とる・小さく硬いコロコロした便がわずかに出るのが特徴です。

2. 会陰ヘルニア

肛門の周囲にある筋肉(骨盤隔膜)が加齢や性ホルモンの影響で弱くなり、直腸が正常な位置からずれて排便が困難になります。未去勢の中高齢オス犬に多く、肛門の横に柔らかい膨らみが見えることがあります。

3. 前立腺肥大

未去勢のオス犬で前立腺が大きくなると直腸を上から圧迫し、便の通り道が狭くなります。排便困難に加え、細い形の便・排尿のしぶり(少量ずつしか出ない)を伴います。

4. 肛門嚢(こうもんのう)のトラブル

肛門の左右(4時と8時の位置)にある肛門嚢が腫れる・感染する・破裂すると、排便時に強い痛みが出ます。犬はいきむことを避けるようになり、結果的に便秘に見えることがあります。お尻を地面にこすりつける「スクーティング」が特徴的です。

5. 腸閉塞(ちょうへいそく)

異物・腫瘍・腸重積(ちょうじゅうせき=腸の一部が隣接する腸にはまり込む状態)によって腸管が物理的にふさがれている状態です。完全閉塞では便もガスも出なくなり、嘔吐・腹痛・ぐったりが急速に進行します。これは緊急手術が必要になることがある危険な状態です。

6. 神経疾患

椎間板ヘルニア・馬尾症候群(腰椎の神経圧迫)などで排便に必要な神経の伝達が障害されると、いきむ力が弱くなります。後肢のふらつき・しっぽが上がらないなどの症状を伴うことがあります。


今すぐ病院に行くべきサイン

以下のいずれかに当てはまる場合は緊急受診が必要です。

  • いきんでいるときに鳴き声を上げるほどの痛みがある
  • 嘔吐を伴っている(腸閉塞の可能性)
  • 24時間以上便もガスも出ていない
  • お腹が膨れて触ると痛がる
  • 血液が肛門から出ている
  • ぐったりして元気がない・食欲ゼロ
  • 異物(おもちゃ・骨・紐など)を飲み込んだ可能性がある
  • 後肢のふらつき・排尿困難も同時にある

様子見してよい場合

以下をすべて満たす場合は12〜24時間の自宅ケアを試みることができます。

  • 最後の排便から48時間以内
  • いきむが鳴くほどの痛みはない
  • 食欲・元気・水飲みは正常
  • 嘔吐がない
  • 肛門周辺に腫れ・出血がない
  • 異物誤飲の心配がない

自宅でできる対処法

水分を積極的に与える

便を柔らかくするために水分摂取を増やします。

  • ドライフードにぬるま湯をかける(フード重量の1.5〜2倍の水を加える)
  • ウェットフードに切り替えるか、混ぜて与える
  • 無塩の鶏ささみゆで汁やヤギミルクを少量加える

食物繊維の追加

  • かぼちゃ(加熱済み・皮と種を除去):体重5kgの犬で大さじ1を1日2回
  • さつまいも(加熱済み・皮なし):同程度の量
  • 市販の犬用食物繊維サプリメント:用量は製品の指示に従う

運動で腸を刺激する

  • 食後30分の散歩を15〜20分延長する
  • 軽いトロット(小走り)を混ぜると腸の動きが促される

お腹のマッサージ

仰向けまたは横向きの状態で、お腹を時計回りにゆっくり3〜5分マッサージします。力を入れすぎず、手のひら全体でやさしく行います。

絶対にやってはいけないこと

  • 人間用の下剤・浣腸を使う:犬に有害な成分(リン酸ナトリウムなど)が含まれている製品があり、中毒を起こす危険
  • 無理やり肛門から便をかき出す:直腸を傷つける可能性がある
  • オリーブオイルを大量に飲ませる:下痢・膵炎のリスク

病院での一般的な治療

参考情報として、動物病院で行われる可能性のある治療を記載します。

  • 浣腸:温水や専用浣腸液で硬い便を軟化・排出させる(獣医師のみが行うべき処置)
  • 用手摘便(ようしゅてきべん):麻酔下で直腸内の硬い便を手で取り出す
  • 輸液療法脱水の補正と便の軟化を促す
  • 内服薬:便軟化剤(ラクツロースなど)・腸運動促進薬の処方
  • 手術:腸閉塞・会陰ヘルニア・腫瘍が原因の場合

病院に行くときの準備

  1. 排便状況のメモ:最後に正常な便が出た日時・便の形状・いきみの頻度と程度
  2. 食事の詳細:フード名・量・直近のおやつ・骨を与えたか
  3. 異物誤飲の可能性:破損したおもちゃ・なくなった靴下など具体的な情報
  4. 便のサンプル:少量でも出た便があれば持参(ビニール袋に入れて)
  5. 歩行の動画:後肢のふらつきがある場合は撮影しておく

この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。

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この記事は一般的な獣医学知識に基づく情報提供を目的としており、獣医師の診察に代わるものではありません。 個々の状態は異なるため、少しでも不安がある場合は動物病院を受診してください。