犬の下痢が何日も続く — 何日目で病院に行くべき?
この記事は獣医師の監修を受けています
「昨日も下痢、今日も下痢……もう3日目だけど病院に行くべき?」と迷う飼い主さんは多いです。犬の下痢は1〜2回の単発なら様子を見ることも多いですが、2日以上続く場合は原則として受診を推奨します。下痢の原因・種類・犬の年齢によって緊急度が大きく変わるため、正しい判断基準を知っておきましょう。
犬の下痢が何日も続く主な原因
急性下痢(発症から2週間以内)の原因
食事性の原因
食事の急な変更(フードの切り替え)、食べ過ぎ、脂肪分の多い食事、拾い食い・ゴミ箱あさりなどが最も多い原因です。1〜3日程度で自然回復することが多いですが、症状が強い場合や改善しない場合は受診が必要です。
ストレス性胃腸炎
引っ越し、新しいペットの導入、来客、花火・雷など環境変化やストレスが引き金になります。自律神経が腸の動きに影響し、下痢を引き起こします。
感染症(細菌・ウイルス)
サルモネラ、カンピロバクター、クロストリジウムなどの細菌感染、パルボウイルス(子犬)、コロナウイルスなどが下痢を引き起こします。他の症状(嘔吐・発熱・血便)を伴うことが多いです。
寄生虫感染
ジアルジア、クリプトスポリジウム、回虫、鉤虫、鞭虫などの腸内寄生虫は慢性的な下痢・軟便の原因として非常に多いです。散歩先での感染や母犬からの垂直感染が起こります。便検査で診断できます。
慢性下痢(2週間以上続く)の原因
2週間以上続く下痢は「慢性下痢」として、より本格的な原因を調べる必要があります。
食物アレルギー・食物不耐性
特定のタンパク質(鶏肉、牛肉、乳製品など)や食品添加物に対する免疫過敏反応です。慢性的な軟便・下痢・皮膚症状が組み合わさることが多く、除去食試験(8〜12週間)で診断します。
炎症性腸疾患(IBD)
腸の粘膜に慢性的な炎症が起きる疾患群で、リンパ球性・形質細胞性腸炎などが含まれます。体重減少・嘔吐・食欲不振を伴う慢性下痢が特徴です。バイオプシー(組織検査)による診断が必要です。
膵外分泌不全(EPI)
膵臓が消化酵素を十分に分泌できない疾患で、シェパードに多いとされます。脂肪を消化できないため、脂っこく量の多い黄色〜灰色の軟便・下痢が続き、食欲旺盛なのに体重が落ち続けます。血液検査(TLI測定)で診断可能です。
腸内細菌叢の乱れ
抗生剤の長期投与後、ストレス、感染症治療後などに腸内フローラのバランスが崩れ、慢性的な軟便・下痢が続くことがあります。
今すぐ病院に行くべきサイン
下痢が続いている間に以下のサインがひとつでも現れたら、すぐに動物病院へ。
- 血便・血混じりの下痢(鮮血・黒色のタール便)
- 嘔吐を伴う
- ぐったりして動きたがらない、または立ち上がりが困難
- 丸1日以上、水を飲もうとしない
- 歯茎が白っぽい・乾燥している(脱水・貧血のサイン)
- 皮膚をつまんでもなかなか元に戻らない(脱水テスト陽性)
- 子犬(1歳未満)で下痢が24時間以上続いている
- 高齢犬(10歳以上)で下痢が続いている
- 水様便(水のような下痢)が何度も出る
- 体重が急激に減っている
水下痢(水様性下痢)は脱水が速い: 普通の軟便と違い、水様下痢では大量の水分と電解質が急速に失われます。特に小型犬・子犬・高齢犬では数時間でショック状態に陥ることがあるため、水様下痢が繰り返される場合は迷わず受診してください。
様子見してよい場合
以下の条件をすべて満たす場合は、最大2日間の自宅観察が許容されます。ただし2日経過しても改善しない場合は受診してください。
- 成犬(1〜9歳)で基礎疾患がない
- 軟便〜泥状の下痢で、水様便ではない
- 血液・粘液が混じっていない
- 嘔吐していない
- 元気があり、水を飲める
- 食欲はやや落ちているが完全に廃絶ではない
- 脱水の兆候がない(皮膚テスト正常・歯茎ピンク)
- 食事の変更・ストレスなど原因に心当たりがある
2日を超えたら受診: 3日以上続く下痢は自然に治ることは少なく、原因の特定と適切な治療が必要です。
自宅でできる応急処置
消化の良い食事(または一時的な絶食)
下痢が始まったら6〜12時間の絶食で胃腸を休めることが基本です(子犬・超小型犬・高齢犬・持病のある犬は絶食を避け、早めに受診してください)。
絶食後は消化の良い食事を少量から再開します。ゆでた白身魚(タラ・カレイ)や鶏ささみの茹でたもの+白ご飯、または処方食(消化器サポート食)が適しています。
水分補給を最優先に
下痢で失われる水分を補うため、水を常に飲めるようにしておきます。ただし一度に大量に飲ませると嘔吐を誘発するため、15〜20分おきに大さじ2〜3杯(30〜45ml)ずつ与えます。
飲まない・飲めない場合は脱水が進行している可能性があります。早急に受診してください。
脱水チェックを定期的に行う
スキンテント(皮膚テスト): 背中または首の皮膚をつまんで放したとき、1〜2秒以内に元に戻れば正常。3秒以上かかる場合は脱水の疑い。
歯茎チェック: 歯茎はしっとりしたピンク色が正常。白っぽい・乾いている・ねばねばしている場合は脱水または異常のサイン。
整腸剤は獣医師への相談を優先
市販のビオフェルミン(乳酸菌製剤)は犬に使用しても安全性は高いとされますが、下痢の原因によっては効果がない・使用すべきでないケースもあります。自己判断より早期受診を優先してください。
人間用の下痢止め薬は絶対に与えない
ロペラミド(ストッパーなど)は犬に対して毒性があり、神経症状を引き起こすことがあります。絶対に与えないでください。
病院に行くときの準備
持参するもの
- 便のサンプル(新鮮なもの。ビニール袋に入れて冷蔵保存)
- 下痢の経過メモ(始まった日・回数・変化の記録)
- 最近の食事内容と変更点のメモ
病院で伝えること
- 下痢が始まった日と現在までの経過
- 1日何回・どのくらいの量が出ているか
- 下痢の性状(軟便か水様か・色・粘液や血液の有無)
- 食欲・飲水量の変化
- 嘔吐・元気消沈・体重変化の有無
- 最近の食事の変化・おやつ・フードの種類
- 拾い食い・散歩先での異食の可能性
- 最近の環境変化(引っ越し・新しいペット・来客など)
- 寄生虫駆除の最終実施時期
- ワクチン接種歴
- 現在服用中の薬・サプリメント
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。